投資が題材になっている小説「波のうえの魔術師」を読みました。
企業や経済事件等を描く経済小説の要素を含みつつ、基本的には主人公の投資家としての成長が物語の軸になっています。石田衣良さんの文体もあいまって、当時の社会状況や株式市場の魅力が手に取るように感じられる非常に面白い作品です。
少しでも投資に興味がある方にはとてもおすすめです🌟
感想をまとめましたので、ぜひ最後までお読みください。
波のうえの魔術師
本の基本情報です。
タイトル:波のうえの魔術師
著者:石田 衣良
定価:定価 550円(税込)Kindle版
発行:文藝春秋
発売日:2001年8月29日
石田衣良さんといえば「池袋ウエストゲートパーク」が有名ですが、その他にも「4TEEN」「ブルータワー」など数えきれないほど人気作品があります。特に2000年代初頭は、作品のドラマ化などの影響もあり若者人気が圧倒的だったイメージです。
今回改めて読んでみても、主人公の少し冷めた感じや言葉づかいが、若者が自分と重ねやすい部分もありつつ、いいバランスで憧れの要素も入っていて、秀逸だなーと思いました。
かといって、若者だけが楽しめるというわけではなく、ストーリーや背景、登場人物の深い思考や心情がしっかり描かれているので、どの年代でも物語に入っていける印象です。
「波のうえの魔術師」を改めて読んでみた感想
2006年頃に1度読んでいるので、今回読むのは2回目でした。
面白かったという記憶はあったのですが、実際に改めて読んでみると想像以上で、色々な面で心動かされました。
ざっくりとですが、まとめると以下3点です。
- 物語が面白い(さすがの石田衣良さんでした)
- 想像以上に株の売買の部分がしっかり描かれていた
- 当時の社会状況が感じ取れて、懐かしく、苦々しく、感慨深い
ネタバレしない程度にもう少し詳しく書いていきます。
物語が面白い(さすがの石田衣良さんでした)
単純なイメージですが、投資を軸にした小説で話を面白く展開するのって難しそうですよね。投資家自身のやっていることって実際は地味ですし、結果も儲かるか損をするかの2択になってしまいます。
だからこそ投資を題材にした小説って他に聞いたことがないのかな、と思いました。
でも、この小説は社会状況や銀行に潜む問題を絡めて話の展開を作ることで、物語としてもとても面白く仕上がっていました。
それに加えて石田衣良さんの独特の人物の描き方で地味にならないのはもちろん、派手過ぎずいい塩梅で話が進んでいきます。
なので「題材が投資だから、小説としての物語の面白さはどうなの?」と考えている方がいたら心配無用です。
想像以上に株の売買の部分がしっかり描かれていた
ここだけ少しネタバレが入るかもしれません。(小説を楽しむのに影響はありません)
普通、株の売買と言えば、分かりやすく株を現物で買うことを想像しませんか?
でも、この小説では信用取引で「売る」んですよね、しかも分割で。
安易に分かりやすく株の売買を描かないところがリアルさを引き立てています。
また、文中ではこんな表現が出てきます。
波動の上げ下げと潮の満ち引きを感覚的に抽出する。それが値動き感覚というものだ。
「波のうえの魔術師」P33より引用
主人公はこの「値動き感覚」を養うために毎日新聞を読み、終値を記録し続けます。
値動き感覚を養うために行うこと(新聞を読む)は具体的ですが、実際の「値動き感覚」って抽象的ですよね。その人だけがわかる感覚なので、結局他の人には再現できない、みたいな。
このようなことを、現実の有名投資家さんがおっしゃっていたような気がして、とてもリアルに受け入れられました。
当時の社会状況が感じ取れて、懐かしく、苦々しく、感慨深い
1ページ目にこんな断りが書かれていました。
差別的表現と受け取られかねない表現が使用されている場合もありますが、作品の書かれた当時の事情を考慮し、出来る限り原文の通りにしてあります。差別的意図がないことをご理解くださいますようお願い申し上げます。
「波のうえの魔術師」P1より引用
内心「うんうん、あるだろうね、わかってるよ」と思いながら読み始めました。
結果的に感覚的に不快な部分はなかったのですが、今なら削られていしまいそうなきわどい表現はいくつかありました。でもそれがその時代の雰囲気を説明していたりするんですよね。
そういうきわどい表現も残っていて「当時の雰囲気が生々しく感じられて懐かしかった」という話です笑
ただ、当時現実にあったであろう社会状況に関しては苦々しく感じるところもありました。具体的には会社(小説の中では銀行)内の上下関係や、悪意なく仕事としてやったことが、相手を大きく傷つけているような状況が描かれています。
小説の中の出来事ほど重大なことでなくとも、会社員経験がある身としては「会社って今も昔もつらいなー」と思ってしまいました。でも小説内では悲壮感なく描かれていますので、ご心配なく!です。
そんなこんなで、内容とは関係ないことも色々感じながら楽しい読書の時間が過ごせました。
おわり
この本は株式投資を始めたきっかけになった本でした。
プロフィールには投資歴4年と書いていますが、実は証券会社をはじめて開設したのは2006年で、株式投資を半年から1年くらいやっていました。そのうち忙しくなってやめてしまっていたのですが、ようやく2020年に再開しました。15年以上のブランクなので、経験は消し去って「投資歴4年」としています。(不思議に思った方へ念のための説明でした)
当時数えきれないくらい本を読んでるので、内容もなにも覚えてなかった(面白かったなくらい)のですが、「石田衣良さんの投資を題材にした小説を読んで、それがきっかけで投資を始めた」ということだけは覚えてました。
自分の生活とは異世界に感じて、なんかやってみたいと思ったんでしょうね😅
口座を開かせてくれた石田衣良さんに感謝です。
それでは今回の記事は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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